2009/12/06

知識の構造化・講演

小宮山 宏
オープンナレッジ
発売日:2007-12-13

"圧倒的な知識・情報の増加により専門領域が細分化"した結果、全体像が見えなくなってしまった。故に構造化による俯瞰像の獲得と今ある部分像の両方が必要である、と考える著者の講演抜き書き形式による本。

世界・日本における過去から分化された現代に至るまでのプロセスを導入に、現在の問題提起、そもそも構造って何? に対する説明、思想としての構造主義に対する解説、今後の日本が進むべき道の提言を述べている。

フランス革命の土壌となったとされる"エンサイクロペディア"の日本語訳=百学連環は、明治時代の哲学者 西周によるものであった事や、「1970年代に作られた平凡社の百科事典は編集委員が520人、執筆者が7000人(P158)」という興味深い事実を通し、「wikipediaに代表されるようなweb上のサービスは便利だが、知識が構造化されていない(同)」点に不満を感じている、というのが著者の実感である。

私自身の経験としても、組織成熟化による部分最適への邁進と、学問の細分化による他領域への無関心は相似形だと考えるし、便利・楽ではあるが近視眼的になっている現状に危機感を抱く。モノゴトが整理されているようで、実はエントロピーが増大しているのではないか。

本の中では、最終的に「日本は多様な問題が身近にあり、かつ実はそれらを解決する技術や行動をしているから、ビジョンを持って今後もイノベーションしていき、フロントランナーになろう」というメッセージで締めくくられる。

著者なりの、一応の結論は記述されているが、それが唯一の方策ではない、本書から触発された読者それぞれが考えるべきものである、というのが読了後の感想。

くれぐれも、企業活動が以下のようになっては or してはいけない、と強く感じた。

分子が勝手に動いて衝突しあい、全体の運動量がゼロに等しくなるブラウン管運動と同じ p192

以下、気になった文言。
領域を区切ってその中に基本原則を発見するのが科学の基本的なやり方 (P76)

俯瞰像と部分像を利用する事によって、今どの階層構造で議論しあっているのか、自分は今、どの階層構造まで解明しようとしているのかを把握する事ができる(P82)。

専門性はないけれど、総合的な医学知識を持ち、診断できるお医者さんが大勢いました。しかし今はどんどん文化していって、特定の医療科目には深い知見を持っていても、総合的な診断を出来る医者がいなくなりました。(P87)

以前は知識源が限られていたという理由で「know how」が重要でしたが、最近は、どのような知識がどこにあるのかという「know where」も大切な知識です。(P106)

非常に大雑把に言えば、構造主義とは、(中略)構成要素に分解し、要素間の関係を整理統合することによって対照を理解するというアプローチ方法です。(P118)

金子邦彦教授がかかれている「還元論の限界」は、非常に興味深いものがあります。つながる限界までやってみれば、何が繋がらないのかという新たな問題設定が可能になり、知識の構造化と効率的な理解、その利用可能性が広がるでしょう。(P207)






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