2010/02/28

謎の会社、世界を変える。―エニグモの挑戦

須田 将啓,田中 禎人
ミシマ社
発売日:2008-03-14

この手の本にしては若干古い本になるが、リアルな起業物語が生々しく、スピード感と想いを形にしていく過程が元気にさせてくれる。

アイディア発想からブラッシュアップ、パートナーと考えていた人との決裂、 社名考案、個人的つながりでの出資者募、システム発注先の夜逃げ、 などなどサービス開始までの紆余曲折が共同経営者2人の視点で交互に記述されていく。 そのスピード感たるや。

私自身2000〜2002年まで、学生社員としてベンチャーに在籍していた関係で、文章から昔の肌感覚が呼び起こされる。

一つ新しいサービスを立ち上げるために、会社全体が一体となって課題を解決していく様は、毎日が「学園祭前夜」みたいな雰囲気で、(仕事だから当然)辛いのだけれど、非常に心地よいもの。

思い返すと「仕事における主体性」や「チームでのプロジェクト推進」「意見をぶつけ合う会議」「新しい仕組みの創造」など、自分の仕事における基本スタンスは、この時代に養われたと思う。

その後、その会社は無事IPOし、2009年度はこの不況下で過去最高に良い決算になりそう。当時、私がIllustratorとPhotoshopで夜な夜な作成した会社ロゴは、上場後の今でも利用して頂いており、非常に恐縮。

今の組織での仕事も日々課題の連続で楽しい。
でも、ベンチャーで経験した感覚は今でも忘れない。

そんな気持ちを思い出させてくれた。

2010/02/25

フラットな世界、twitterの面白さ

正直、「twitterって何のため?」なんて考えていたけれども、ここ最近、その認識を改めつつある。ネットワークによるコミュニケーション革命によって、確実に世界はフラットになっていると実感したから。

■普通に生活してたら実世界での直接発言を聞く機会が、滅多に無い人の発言が見える

@Astro_Soichi 宇宙飛行士 野口聡一
彼、今宇宙。なのに発言がリアルタイムでわかるこのスゴさ。写真も素晴らしい。

@skmt09 坂本龍一

@takashipom 村上隆

@hazuma 東浩紀

@BillGates ビル・ゲイツ


■企業がユーザニーズ吸い上げの場として利用している

@masason 孫正義
驚くのは、Twitterで要望受けた料金プランを1週間で実現した事。
http://twitter.com/masason/status/8847481518
これだけ大規模な企業には考えられないスピード。情報システムがどうなっているのか興味深々。

@hmikitani 三木谷浩史
楽天のAPIも近々充実されそうだし。


信ぴょう性の無い情報が錯綜したり、”なりすまし”があったり(ハバーマスの件は残念。。。)もするけれど、それらのデメリットよりも面白さの方が上をいっている。自分ではあんまりつぶやかないので、受ける専門ですが。。。

2010/02/17

Nuit Blanche/Making Of Nuit Blanche



白夜(Nuit Blanche)、というタイトルのショートムービー。
ストーリーは「話としてはよくありがちだけど現実にはあまりない」場面を描いているけど、表現手法・映像クオリティが素晴らしい。一瞬で相互に惹かれあう様が"hyper real fantasy"に描かれる(*)。

Nuit Blanche


で、そのメイキングがこっち↓。
個人的にはメイキングの方が好き。

Making Of Nuit Blanche

Making Of Nuit Blanche from Spy Films on Vimeo.



このプロダクション、センスの良い映像を制作してます。


2010/02/16

parallel world(s) stories + research

1Q84、アバター、クォンタム・ファミリーズ(QF)。


1Q84だけは2009年6月だったけど、後者2つはここ1ヶ月で観た/読んだ物語。

青豆と天吾、1984年と1Q84年の並行世界。
地球人とナヴィ族の、地球人ジェイクとナヴィ族ジェイクの並行世界。
そして、(1回読んだだけでは)把握しきれないほど交錯しあう家族を巡る並行世界。


東浩紀がQFで書くように、
生きるとは、なしとげられるはずのことの一部をなしとげたことに変え、残りをすべてなしとげられる《かもしれなかった》ことに押し込める、そんな作業の連続だ。(中略) 直接法過去と直接法未来の総和は確実に減少し、仮定法過去の総和がそのぶん増えていく。
という時代感覚は、決してネガティブな意味ではなく、ポジティブにしっくりくる。
だとすると、

・並行して存在する世界同士が対峙する+物理的存在の2者間を移動する物語(アバター)、
・並行世界を飛び越えて登場人物が一つの世界に同居する物語(QF)、
・登場人物同士は決して出会わない、でも1人称では並行世界を渡る物語(1Q84)

と形はいろいろあれど、マーケティング的に考えたも、この物語たちは必然かも、と思える・・・

・・・ということを考えていた折、週刊朝日の中森明夫 連載に「映画アバターと並行世界的想像力」というコラムがあることをtwitterで知り、普段読まない週刊誌を早速立ち読みしてみた。感想は「自分と同じことを考えてる」という感じ。なんとなく悔しい思いがして、書かないでいたのですが、+αの興味深い記事があった(ので書いている)。


「光合成は量子コンピューティング」:複数箇所に同時存在

小学校時代に習った、あの光合成。あれが、なんと量子物理学的プロセスであるという研究成果がNatureに発表されたとの事。量子コヒーレント=量子重ね合わせ状態=量子力学において確率的に得られる二つの状態がいまだに決定されていない状態。

今まさに何かの意思決定を求められている(A or B)状況で、まだ判断していない時点では、Aと判断した場合の世界と、Bと判断した場合の世界が存在している、という考え方。

以前書いた、理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 の2章や、(まだこのblogでは書いてない)SF小説がリアルになる 量子の新時代 (朝日新書 187) の第1部2章~3章にかけての文章が解りやすい。

身近に生息している植物たちが、我々の想像を超えた現象によって生きているって考えるだけで、わくわくどきどき。

今(2010年)時点の常識から考えたら、突拍子も無い捉え方かもしれないけど、「太陽が動いている」と考えられていた時代に「地球が動いている」なんて想像もされなかったのと同様??? と考えると、真面目にそれアリかも、と思います。

アバターは一般的に、クォンタム・ファミリーズは東浩紀好きにとって、どちらも流行りもの的な感はあるけど、かなりおすすめです。


東 浩紀
新潮社
発売日:2009-12-18

余談:アバターは、IMAXで見た方がいいです。ここのレビューでも、だし、実際見ると3D具合にびっくり。押井守も完敗宣言しちゃってるし、ぜひ。